冬場はヒートショックに注意を

最近めっきりと寒くなり、温かいお風呂が気持ち良い季節となってきました。
一方で、毎年11月から3月にかけての寒い季節は、入浴中に死亡する事故が多くなります。冬場は夏場に比べて入浴中の死亡事故が6.9倍も増加するといったデータがあり1)、冬場の入浴事故の原因として、急な温度差が引き起こすヒートショックが影響していると言われています。

ヒートショックとは?

ヒートショックとは急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす健康被害のことを言います。浴室と脱衣所、リビングや寝室と廊下の間など、温度差が大きくなる場所を行き来する際に発症のリスクが高くなります。
特に全身が露出する入浴時はヒートショックのリスクが高く、入浴中に失神して溺死してしまうことがあります。

厚生労働省人口動態統計(令和3年)によると2)、浴槽内での溺死・溺水の死亡者数は5459人であり、これは同じ年の交通事故死亡者数(3536人)の約1.5倍になります。

ヒートショックを起こしやすい人とは?

以下の項目に当てはまる方々は、動脈硬化によって血圧が変動しやすいため、ヒートショックのリスクが高いと言われています 1, 3)

  • 高齢者
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症
  • 脳梗塞や狭心症の既往

また、鹿児島県における入浴関連死の調査報告によると3)入浴関連死亡者の約9割は何らかの基礎疾患(高血圧が最多)があったことが報告されており、持病がある方は特に注意が必要です。

ヒートショックの対策は?

  1. 入浴前に脱衣所や浴室を暖める
    急激な温度変化をさけるために、暖房器具によって脱衣所や浴室を暖めるようにしましょう。
  2. 熱いお湯と長湯は避ける
    お湯の温度は41度以下、入浴時間は10分程度を目安にしましょう4)。半身浴でも長時間の場合は体温が上昇するので、長時間の入浴は避けましょう。
  3. 食事直後、飲酒後の入浴は避ける
    食後1時間以内や飲酒後に入浴すると血圧が下がりやすいです。また、夕食後に降圧剤や睡眠剤を内服されている方は血圧がより一層下がりやすく、意識障害を来すことがあります。

高齢者だけでなく若い方でも持病がある場合はご注意を

入浴関連死亡者数を年齢別に見た場合、全体の約90%が65歳以上の高齢者となりますが 1-4若い方でも高血圧や糖尿病、脂質異常症などの持病がある方は発症のリスクがあるため、十分に注意しましょう。

冬場はご体調を崩しやすい季節です。健康面で気になることがあればいつでもご相談ください。

参考文献:

1.Suzuki H et al. Characteristics of sudden bath‐related death investigated by medical examiners in Tokyo, Japan (2009–2011). J Epidemiol. 2015;25:126–32.

2.厚生労働省 令和3年(2021)人口動態調査

3.Katsuyama M et al. Development of prevention strategies against bath-related deaths based on epidemiological surveys of inquest records in Kagoshima Prefecture. Sci Rep. 2023 Feb 8;13(1):2277.

4.Suzuki H et al. Bath-related deaths: Preventive strategies and suggestions for general physicians. J Gen Fam Med. 2017 Mar 21;18(1):21-26.

院長 角田昇隆

秋葉原内科シンシアクリニック
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内科・循環器内科・糖尿病内科・呼吸器内科