熱中症の症状と対策について

8月に入り暑さがますます増してきましたね。
ニュースでも頻繁に報道されているように、この時期は「熱中症」の患者さんが多く受診されています。下の図は消防庁のホームページからの引用になりますが、7月中旬における熱中症での救急搬送患者数は昨年同時期と比べて全国的に増加傾向にあり、特に東京都・関東圏での増加が著しいことが示されています。
今月に入り、熱中症のリスクは更に高まることが予想されますので、今回は熱中症の症状や対策についてお話したいと思います。

引用:総務省消防庁ホームページ「救急搬送状況」より

どんな症状?

熱中症の症状はさまざまで、症状の程度によって3つの重症度にわけられます。

①軽症の場合(Ⅰ度)

めまい、筋肉痛、筋肉の硬直、手足のしびれ、気分不快感などです。

軽症であれば意識はハッキリしており、すぐに涼しい場所に移動して体を冷やしながら水分と塩分を摂取すれば病院を受診しなくても回復することが多いです。しかし、対応が遅れたり、そのまま放置すると中等症(Ⅱ度)に移行するため、十分な注意が必要です。

②中等症の場合(Ⅱ度)

強い倦怠感や頭痛、吐き気がみられます。意識レベルは少し低下している場合があり、呼びかけに対する反応が少し遅れたり、周りからみて「いつもと様子が違う」と判断される場合があります。これら症状を伴う場合は、病院への受診が必要な状態です。

③重度の場合(Ⅲ度)

意識障害(呼びかけに反応しない、自分の名前が言えない、場所が分からない)、けいれん、高体温、臓器障害(肝機能障害、腎機能障害)など、特に重篤な症状があげられます。

対処が遅れると生死に関わるため、すぐに救急車を呼ぶなど早急な対応が必要です。

以上のようにさまざまな症状がありますが、その場で確認すべきは「いつもと比べて意識がしっかりしているかどうか」です。少しでも異変を感じた場合は病院を受診した方がよい場合が多く、段々と意識が悪くなる場合は悩まずに救急車を呼んでください。

引用:環境省ホームページ「熱中症になったときには(PDF)」より

熱中症対策は?

①暑さを避ける

・暑い日は無理な外出を控えましょう。
・天気予報を毎日チェックし、熱中症注意報や熱中症警戒アラートを確認しましょう。
・日傘、携帯型扇風機、冷却グッズを積極的に活用しましょう。

②空調設備の使用

・熱中症の約40%が室内で発生します。室温が28℃以上になると熱中症の可能性が高くなるため、エアコンや扇風機で温度調節をしましょう。

※28度は「エアコンの設定温度」ではなく、「室内温度」であることに注意してください。部屋の広さや日当たりなどによって、エアコンの効き目は変わるため、エアコンの設定温度を28度にしても部屋の温度が28度になるとは限りません。

・湿度が10%上がるごとに体感温度は2度ずつ上がるといわれています。快適に過ごせる湿度は50~60%といわれているため、エアコンの除湿モードも活用して室内環境を整えましょう。

・温湿度計で室温・湿度を確認しながらエアコンの設定温度を調整することは大切です。温湿度計をお持ちでない方はこの機会に実際の室内温度・湿度をチェックしてみてはいかがでしょうか。

③適切な水分補給

・のどが渇く前にこまめに水分補給しましょう。特に高齢者は、のどが渇く感覚が鈍くなっているため、のどが渇く前から脱水症状が始まっている隠れ脱水のリスクがあり、注意が必要です

・体重70kgの成人男性の場合、尿や便、汗などから1日あたり約2.5リットルの水分が排出されます。それに見合った水分摂取量は約1.2リットルであり(その他の水分は食事から補給されます)、夏場で汗を大量にかいた時は発汗量に見合った水分補給がさらに必要になります。体格や年齢、発汗量などによって推奨される水分摂取量は異なりますが、大まかな目安として1.5~2.0リットル程の水分を摂取しましょう。高齢者は1.0~1.5リットルを目安に水分を摂取しましょう。

・また、大量の発汗がある場合は、水分だけでなく、スポーツ飲料等の塩分濃度0.1~0.2%程度の塩分摂取が推奨されています(ポカリスウェット; 0.12%, アクエリアス; 0.1%)。ただし、これら飲料には糖分を多く含むものもあるので、飲みすぎによる糖分の過剰摂取には注意してください。

OS-1は塩分濃度が0.3%と高く(OS-1 500mlのナトリウム含有量=味噌汁1杯分=梅干し1個分に相当します)、スポーツ飲料に比べて水分をより効率的に吸収できます。また、糖分の過剰摂取を抑えられるメリットがあります。

・アルコールやコーヒー、緑茶、紅茶などカフェインを含む飲料には利尿作用があるため、飲み過ぎないように注意しましょう。

④適切な栄養バランス

暑い日は食欲がなくなり、あっさりしたものしか食べられなくなる方が多いのではないでしょうか。食生活とともに栄養バランスが偏ると熱中症を引き起こしやすくなります。また、発汗によって水分とともにナトリウムやカリウムといった電解質も失われるため、食べ物や飲み物から適切に補給することが大切です。

カリウム
カリウムが低下すると筋肉のけいれん、筋力低下といった熱中症に特徴的な症状が出やすくなります。また、カリウムが極端に低下した場合、不整脈が出現するリスクが高くなります。カリウムは、野菜(ほうれん草、かぼちゃ、トマト、さつまいも、ジャガイモなど)や果物(バナナ、柿など)、海藻に多く含まれます。

ビタミンB1
ビタミンB1には糖質をエネルギーに変換する酵素を助ける働きがあるため、ビタミンB1は疲労回復に効果的と考えられています。ビタミンB1は、豚肉、玄米、納豆、ほうれん草、うなぎなどに多く含まれるため、是非レシピに取り入れてみましょう。

アリシン
アリシンはビタミンB1と結合し、ビタミンB1の効果を持続させる働きがあるため、ビタミンB1と一緒に摂取するとより効果的です。アリシンを多く含む食材には、玉ねぎ、ねぎ、にんにく、ニラなどがあります。

クエン酸
クエン酸は疲労の原因物質である乳酸を効率良くエネルギーに変える効果があります。クエン酸を多く含む食材には、レモンやグレープフルーツなどの柑橘類や梅干し、お酢などがあります。梅干しにはクエン酸のほかに、塩分も含まれるため、熱中症予防にはより効果的と言えますね。

感染症との区別が難しいケースも

熱中症の症状である、発熱や頭痛、倦怠感などは新型コロナウイルス感染症でもみられます。発症のきっかけや、その他の症状(咽頭痛や咳など)の有無で区別できることが多いですが、判断が難しいケースも少なくありません。
7月中旬に入ってから、発熱外来を受診される患者さん、熱中症で受診される患者さんは共に増加傾向にあります(※PCR陽性者の割合は特に増えています)。

問診・診察を丁寧に行うことで、適切な検査・治療をご案内できるよう心がけておりますので、症状が気になる方はいつでもご相談ください。
※PCR検査結果は即日でお伝えできますので、検査を受けた方がよいかどうか悩まれている方もご相談ください。

まだまだ暑い日が続きますので、ご体調にはくれぐれもお気をつけてお過ごしください。

院長 角田昇隆

秋葉原内科シンシアクリニック
〒101-0025 東京都千代田区神田佐久間町 1-6-5 アキバ・トリム B1F
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