清涼飲料水の飲みすぎには注意しましょう

適切な水分補給を

7月に入り真夏日が増えてきましたね。これから更に暑い日がやってくると思うと少し気が重くなります・・・

暑くなるにつれて脱水や熱中症のリスクがぐっと増えますので、水分補給や空調管理などには十分に気を付けてください。ここで更に注意していただきたいのが「補給する水分の内容」になります水分を摂取される際、ついついスポーツドリンクや糖分が含まれた炭酸水などを多く摂取していませんか?

スポーツドリンクなどの清涼飲料水を摂取することで、発汗によって体から失われた水分やミネラル(ナトリウムやカリウムなど)を効率良く補充することが出来ます。

しかし、あくまで「代謝によって失った水分やミネラルを補充する」目的として適量の摂取にとどめた方がよく、のどが渇いたからといってダラダラと飲み続けると大変危険です。

なぜなら、これら糖分が多く含まれている清涼飲料水を日常的に飲みつづけることで、「ペットボトル症候群」という急性の糖尿病を引き起こす可能性があり、重度の場合には昏睡状態に陥ることがあります。

ペットボトル症候群とは?

糖分を多く含む清涼飲料水を飲むと血糖値が上昇します。血糖が上昇すると膵臓からインスリンというホルモンが分泌されて、血液中のブドウ糖を細胞の中にとりこみ、エネルギーに変換します(=血糖値を低下させます)が、清涼飲料水を飲みすぎてしまうと糖分の摂取が急激に多くなりインスリンの働きが悪くなります。

すると、体内では脂肪分を分解してエネルギーを産生し、脂肪分解の際に「ケトン体」とよばれる副産物が過剰に蓄積し、さまざまな症状を引き起こします。

ペットボトル症候群の症状とは?

多飲・多尿

過剰な糖分を薄めようと体は水分を欲するようになり、これとともに多尿になります。すると、口腔内が乾燥し、味覚異常が生じることもあり、より一層ソフトドリンクを多飲するようになります。つまり、どんどん血糖値が上がるサイクルに入ってしまうのです・・・

体重減少

脂肪分が分解され始めると、体重が減少します。この病気に限らず、急激な体重減少がみられた場合は必ず体に異変が起こっています。

倦怠感・腹痛・嘔吐・意識障害など

体内にケトンが溜まると、血液が酸性に傾き、倦怠感・頭痛・腹痛・嘔吐などの症状がみられます。重度の場合、脳への酸素供給が低下してしまい、昏睡状態に陥ることもあります。

どのような人が発症しやすい?

10~30代の肥満傾向にある方が多いです。糖尿病の素因を持たれている方や健診で指摘された高血糖をずっと放置していた方などは特に注意が必要です。

治療の流れは?

体調の変化を自覚したらすぐに受診してください。まずは問診・診察を行い、症状や病歴からこの病気が疑われる場合は血液検査と尿検査を行います。

<血液検査>
血糖値、HbA1c値(1~2ヵ月分の血糖値)を測定します。当日すぐに結果が出ます。

<尿検査>
尿中ケトン体、尿糖、尿蛋白の有無などをチェックします。これらもすぐに結果が出ます。

以上の検査結果をもって受診当日に診断可能であり、その日から治療を開始することができます。

予防:飲み物は慎重に選びましょう

一般的に、暑いときの水分補給に適していると考えられているスポーツドリンクには多くの糖分が入っています。世界保健機構(WHO)によると「1日あたりの砂糖摂取量は25gまでに抑えることが望ましい」とされており、ちょうどスポーツドリンク500ml 1本分に相当します。とても厳しい数字ですが、下の表に記したように清涼飲料水にはそれだけ多くの糖分が含まれているのです。飲む回数や本数が増えると血糖がぐんぐん上がるのも納得できますね。

清涼飲料水を飲み続けることのデメリットは?(より長期的な目線から)

清涼飲料水を多く飲み続けることで急な体調変化を来すリスクが高いことをお伝えしましたが、より長期的な影響についてはどうでしょうか。

大規模な研究において、加糖のソフトドリンクの摂取量が増えることで全死亡、心血管死亡、がん死亡のリスクが有意に増加することや、人工甘味料を使用したソフトドリンクの摂取量が増えることで全死亡や心血管死亡のリスクが増加したことが報告されました。(※1)

他にも同様の研究が報告されていることから、長期的な影響からもソフトドリンクがお体に与えるデメリットは大きいと考えられます。

一度水分摂取の習慣について振り返っていただき、清涼飲料水を多く摂取されている方はこれをきっかけにお水やお茶に変えてみてはいかがでしょうか。

これから更に暑い日が続きますので、適切な水分補給を心がけてくださいね。
ご不安なことがあればいつでもお気軽にご相談ください。

参考文献:※1 Malik VS, et al. Circulation. 2019; 139: 2113-25.

院長 角田昇隆

秋葉原内科シンシアクリニック
〒101-0025 東京都千代田区神田佐久間町 1-6-5 アキバ・トリム B1F
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