暖かい春の日が増え始め、日中半袖で過ごされる方も増えてきているように感じます。
そのような中、「飲み会が増えて体重が増えてきた」「暖かくなってきたのでそろそろ運動しないと・・・」といったお話を聞くことは少なくありません。
最初からハードな運動を取り入れることは、血圧の急激な上昇や怪我のトラブルを引き起こす可能性があるほか、精神的なハードルも高く継続性に欠ける場合が多いです。
よって、まずはウォーキングから開始することをお勧めしています。
一方で、「どのくらい歩けばいいですか?」、「ウォーキングだけでいいの?」といった声をいただくことも多いので、今回の記事では、ウォーキングの重要性や推奨される歩数などについてお話出来ればと思います。
厚生労働省の指針では[1]、18~64歳の場合、「3METs(メッツ)以上の強度の身体活動を毎日60分(=23METs・時/週)」が身体活動量の基準とされています。
この聞き慣れないMETsとは運動や身体活動の単位であり、安静に座っている場合を1METとして、様々な活動がその何倍のエネルギーを消費するかを示します。
具体的には表1・2に示すような歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分数)。
この目標歩数の中には、意識的に行うウォーキングだけでなく、生活活動(通勤、通学、労働など)における歩行も含まれるため、歩数計やアプリなどを利用することで日常の歩数を把握することは重要です。
では実際に、ウォーキングは健康にどのような良い影響を与えるでしょうか。
米国民保健栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey; NHANES)のデータを用いた井上氏らの報告によると[2]、8000歩/日を達成した日数が週1~2日程度でも死亡リスクが低下し、健康に良い影響を与えることが示されました。
0日群(週に一度も8000歩/日以上歩いていないグループ)と比較して、1~2日群で-14.9%、3~7日群で-16.5%といずれも10年間の全死亡リスク低下がみられました。
その他、心血管死亡リスクについても0日群に対する1~2日群、3~7日群のリスク差はそれぞれ、-8.1%、-8.4%といずれも低い結果でした。
また、下の図に示すように、8000歩/日の達成日数と10年間の全死亡リスク、心血管死亡リスクはそれぞれ線形の関係がみられ、達成日数が増えるほど両者のリスクは低下しました(3~4日で横ばい)。
これらの結果より、8000歩/日を週に数日歩くことで、健康に対して長期的に良い影響をもたらす可能性が期待出来ます。
仕事や趣味などで運動の時間が確保出来ない方は多いと思いますが、まずは「8000歩/日を週に数日」程度のウォーキングから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献:
1. 「健康づくりのための身体活動基準2013」(厚生労働省)
2.JAMA Netw Open.2023; 6(3): e235174.
院長 角田昇隆
秋葉原内科シンシアクリニック
〒101-0025 東京都千代田区神田佐久間町 1-6-5 アキバ・トリム B1F
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